「 米中首脳会談を前に態度を様変わりさせた中国の思惑 日本側の資源は必ず奪われる 」
『週刊ダイヤモンド』 2006年4月29日・5月6日合併号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 639
東シナ海の天然ガス田開発に関して、中国政府が、日中中間線を越えた日本の排他的経済水域(EEZ)に、船舶の航行および立ち入り禁止海域を設け、中国海事局のホームページに掲載したのは3月1日だった。これを日本の海上保安庁が知ったのが同月下旬、官邸に情報が届いたのは4月14日だった。安倍晋三官房長官が日本の主権的権利の侵害だと抗議したのが17日。その日の深夜、中国外務省は日本大使館に対し、「技術的な間違いだった」と説明、ホームページ上の内容を修正したことを通知した。
18日、中国外務報道官の秦剛氏は記者会見で、「技術的な間違いにすぎない。にもかかわらず、日本側の過剰な反応は不満足だ」と述べた。
中国の修正は日本側の抗議に中国が驚いた証拠、と見るのは人がよ過ぎる。修正はしたが、中国政府は、日本の主張する中間線を認めないと釘を刺している。中間線を越えて、中国式のやり方で開発を継続する意思はまったく変わっていない。
では、なぜ今、中国はあっさりと修正に応じたのか。ちょうど20日に行なわれるブッシュ大統領と胡錦濤国家主席の首脳会談がその理由であろう。中国の戦略は、米国に中国の邪魔をさせないことだ。アジアに中国主導の秩序をつくり上げるために米国を極力排除し、台湾問題などアジア関連の事案に米国の介入を招く隙をつくらないことだ。そのためには米国に、中国こそ信頼に足る国だと信じさせなければならない。摩擦を起こす国でも力ずくで横やりを入れる国でもないと印象づけ、日本よりも中国のほうが信頼に足る国だと見せなければならない。
それでなくとも、中国は過去17年間、対前年比2ケタ台の軍事費増強を続けてきた。人権弾圧は続き、言論、表現、報道の自由も認めない。国内法も国際法も、政権の都合によって事実上ねじ曲げる。そんな欠陥だらけの中国は、胡錦濤主席の訪米を機に、米中関係の緊密化を図り、日米関係の上に米中関係を位置させたい。だからこそ、明らかな国際法違反でゴリ押しの東シナ海での航行禁止海域の設定を、すみやかに修正したのだ。無法行為を行なう国との印象は、首脳会談前は特に、消し去らなければならなかったのだ。
そういえば、日本政府の態度は「不満足だ」と批判した秦剛氏は、いつもの憎々しさのない平静な表情だった。2004年11月10日に、沖縄先島諸島の日本の領海を中国の原子力潜水艦が侵犯したとき、同報道官は、中国原潜は「技術的なミス」で領海に入った、意図的ではなかったと述べた。私はテレビで記者会見を見たが、謝罪の言葉もなく、中国は悪事を働いた覚えはない、騒ぐ日本側こそおかしいと言わんばかりの同報道官の表情の見事な悪人ぶりに感心したものだ。往時と異なり、今回の表情は様変わりだ。そしてそれは日本向けではなく、米国のメディアとブッシュ政権に向けたものである。
中国は間違いなく中間線を越えて日本側の資源を奪うだろう。しかも、堂々と平然と奪うと思われる。なぜなら彼らは前述のように中間線を認めず、大陸棚説に立って、東シナ海は中国のものだと何十年も主張し続けてきたからだ。
対する日本側の対応は、情けないのひと言だ。ひと月も、中国のホームページの情報に気づかなかった。官邸への情報伝達には2週間もかかった。海上保安庁が竹島海域の調査を通知したら、韓国は翌日から激しく反発した。彼らの素早い反応を日本は見ならうことだ。
また、二階俊博経済産業大臣は「単純なミスだ」のひと言で片づけた。中国が中間線を越えて資源を奪い始めるとき、そしてそれはきわめて近い将来起きると思うが、二階氏は、担当大臣として、どう責任を取るのだろうか。
東シナ海航行禁止区域報道を巡るゴタゴタ
17日の深夜に中国外交部が海事局による「技術的な誤り」との連絡を入れてきた模様。 中国が東シナ海のガス田拡張工事のため排他的経済水域(EEZ)の日中中…
トラックバック by 中南海ノ黄昏 — 2006年05月18日 00:15
(画像)竹島問題への決定的証拠”ラスク書簡”
1951年7月19日 韓国大使(ヤン)から国務長官への書簡 一、大韓民国政府は、第二条a項の「放棄する」という語を、「朝鮮ならびに済州島、巨文鳥、欝陸島、…
トラックバック by Here There and Everywhere — 2006年05月28日 09:18
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◆中国への円借款740億円決定、中川農相は異議
政府は6日午前、
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トラックバック by 短く斬れ — 2006年06月07日 23:43
・Q&A : 東シナ海のガス田開発:日本は抗議する資格があるのか?
日本人って・・・
怒っていいとも!
Q&A :東シナ海のガス田開発:日本は抗議する資格があるのか?
>日本は抗議する資格がありますか?
日本は権利は有れ…
トラックバック by ケイさん語録 — 2006年06月20日 13:53